レセプト 査定とは、審査支払機関が請求点数を減額し、減額分を除いて診療報酬を支払うことです(2026年10月時点)[1]。減額された残りは支払われます。

返戻と混同されやすい言葉です。 対応の仕方も、月の入金への影響も違います。まず2つを分けます。

査定と返戻は別物です

査定は請求点数の減額で、返戻は内容確認のための差戻しです。査定は減額後の額が支払われ、返戻されたレセプトは修正・再請求が必要です[1][4]。

医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構、旧・社会保険診療報酬支払基金)は増減点連絡書について、点検・審査等の結果、点数等に異動が生じた場合に知らせる増減点数や事由を表示するものと説明しています[1]。返戻内訳書については内容確認のため医療機関等へ返すレセプトの内訳や事由を表示するものとしています[1]。

表1 査定と返戻の違い(2026年10月時点[1][4])

項目

査定

返戻

何が起きたか

点数が減額された

レセプトが差し戻された

その月の支払

減額後の分が支払われる

支払われない

医療機関がすること

内容を確認し、必要なら再審査を申し出る

修正して再請求する

通知される書類

増減点連絡書

返戻内訳書

DX審査支払機構は診療報酬点数表や関連通知などの保険診療ルールに基づき、審査委員が医学的見地から審査すると説明しています[4]。返戻では内容の確認と修正、査定では減点理由と算定根拠の照合が必要です。

返戻では該当レセプト全体の支払が遅れ、査定では減額分が支払われません。影響の大きさは件数と金額により異なります。 その月の支払対象から外れるため、再請求は翌月以降になります。査定は減額後の分がその月に入ります。

査定と返戻の違いは月々の入金額に直結します。査定は減額されたうえで入金がありますから、予定していた金額とのずれとして現れます。返戻はその1枚が丸ごと翌月以降に送られるため、件数が多い月は入金そのものが落ち込みます。どちらも放置すると、原因が分からないまま毎月同じことが起こります。

院内の担当も分けたほうが進みます。査定は診療内容の説明が必要になるため、医師の確認が要ります。返戻には事務的な修正で対応できるものと、診療内容について医師の確認が要るものがあります。届いた書類を1か所に集め、査定と返戻に仕分けてから担当に渡してください。この一手間で対応の速度が変わります。

査定内容は増減点連絡書で確認します

査定の内容は増減点連絡書で確認します。対象レセプト、増減点の項目、点数と事由を照合します(2026年10月時点)[1]。

増減点連絡書を読む手順は3つです。

  1. 患者と診療年月から対象レセプトを特定します。
  2. 減点された項目と点数を確認します。
  3. 事由の記号を読み、カルテや算定要件と照合します。

このうち3つ目が判断の起点になります。記号によって、再審査を申し出る価値があるかどうかが変わるためです。

DX審査支払機構は点検の種類についても説明を出しています。縦覧点検は同一患者の複数月にわたるレセプトの通覧点検により補正・査定された内容、入外点検は同一患者の入院と入院外レセプトの通覧点検により補正された内容です[1]。当月のレセプト1枚では説明がつかない減点があれば、この2つを疑ってください。

届いた書類は月ごとに保管してください。同じ患者、同じ項目で減点が繰り返されていれば、個別の判断というより、自院の算定の解釈そのものにずれがある可能性があります。1枚だけを見ていては気づけません。3か月分を横に並べると、繰り返しが見えてきます。

事由の記号で原因が分かります

増減点事由はA〜Dの診療内容に関するものと、F・G・H・Kの事務上に関するものに分かれます[1]。記号だけで再審査の可否は決まりません。

表2 増減点事由の記号(2026年2月版[1])

区分

記号

内容

1 診療内容に関するもの

A

療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上適応とならないもの

1 診療内容に関するもの

B

療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの

1 診療内容に関するもの

C

A・B以外で医学的に保険診療上適当でないもの

1 診療内容に関するもの

D

告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの

2 事務上に関するもの

F

固定点数が誤っているもの

2 事務上に関するもの

G

請求点数の集計が誤っているもの

2 事務上に関するもの

H

縦計計算が誤っているもの

2 事務上に関するもの

K

その他

F・G・Hは計算の誤りです。 入力内容、固定点数、集計処理、レセコンの設定などを確認します。レセコンは診療報酬請求用のコンピューターです。この記号が続くようなら、再審査を申し出るより手順を直すほうが早く減ります。

A・B・C・Dは診療内容に関するものです。Aは適応外、Bは過剰・重複、Dは算定要件を満たしていないという判断です[1]。算定要件を満たす根拠があり、査定に異議がある場合は再審査を検討します。説明を追加すれば必ず認められるわけではありません。症状詳記や検査値を添えて再審査を申し出る場面は、この記号のときです。

記号は原因のある場所を示しています。F・G・Hが指すのは計算の過程、A・B・C・Dが指すのは診療内容の判断です。前者は手順を直せば減ります。後者は医学的な必要性と算定要件の根拠を確認します。同じ「減点」という言葉で届いても、次にすることはまったく違います。

DX審査支払機構は個別の判断例も公表しています。「DX審査支払機構における審査の一般的な取扱い(医科)」は、2026年9月30日の第40回公表分まで、累計881事例が掲載されています(2026年10月時点)[5]。ただし同資料は「本公表事例に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意願います」と断っています[5]。

再審査の対象は減点理由と提出先の取扱いで判断します

再審査を検討できるかどうかは、減点の理由、診療時の記録、提出先の取扱いを照合して判断します。記載漏れの扱いを全国共通と決めつけないことが必要です[3][6]。

北海道国民健康保険団体連合会(北海道国保連)は再審査請求について明記しています[3]。

病名の欠落、記載誤り等による減額査定分は、再審査請求及び取下げの対象となりませんのでご注意ください。

北海道国保連の案内では、該当する病名欠落・記載誤り等の減額は、この再審査請求と取下げの対象外です。他の国保連やDX審査支払機構の扱いまで同一とは限りません。対象の提出先へ確認します[3][6]。

再審査の対象外となる記載漏れを防ぐことも、点検の役割です。請求前の点検で防げるのは、まさにこの取り戻せない部分です。後から説明を加えても対象外となる場合があるため、請求前に記載と算定根拠を点検することを提案します。

逆に、医学的な判断に関する減額であれば、根拠を添えて申し出る余地があります。検査を行った理由、投薬の必要性、患者の状態。これらを説明できるのは医療機関側だけです。

AX総合研究所は院内で再審査を検討する基準を決めることを提案します。たとえば次の2つが考えられます。

  • 記号がA・B・C・Dで、かつ減点が一定の点数を超えているもの
  • 同じ算定内容で、複数の患者に同じ減点が出ているもの

基準がないと担当者ごとに判断が変わり、出すかどうかの相談だけで時間が過ぎていきます。

申出には理由書を添えます。書くのは、減点された項目について、その診療がなぜ必要だったかの説明です。カルテの記載、検査値、患者の経過。審査委員は提出された書面だけを見て判断しますから、診療の場では当然だった前提も、書かなければ伝わりません。ここを省いた申出は認められにくくなります。

再審査の判断は事由の記号と診療録・算定要件を合わせて行います。 すべてに出すと事務の負担だけが増えます。請求前の点検についてはレセプト点検の代行にまとめました。

再審査請求の期限と出し方

DX審査支払機構の再審査申出は事務上の明らかな誤り等を除き、原則6か月という取扱いです。診療報酬請求権の時効とは別に管理します(2026年10月時点)[9]。

原則6か月は、機構が示す運用上の取扱いです。ただし遅れれば審査が難しくなるため、実務では6か月を期限として扱います。

国保連も同様です。北海道国保連は増減点・返戻通知書または過誤・再審査結果通知書等の送達後、6か月以内に行うよう求めています[3]。国保連は都道府県ごとに運用が異なるため、自院の請求先の案内を確認してください。

再審査の提出方法も確認します。DX審査支払機構はオンライン請求医療機関等について原則オンライン提出としていますが、訪問看護ステーションはこの取扱いから除かれます。資料を添付する場合やオンライン提出が難しい場合は郵送の案内があります(2026年10月時点)[6]。

保険者向けの「再審査請求に係る受付締日」を、そのまま医療機関の提出期限に当てはめることはできません。医療機関は自院の提出方法と受付日程を確認し、通知の受領日、申出を検討する日、必要資料が揃う日を院内で管理します。申出期間の末日に近い案件では次月へ先送りせず提出先に確認します。

もう1つ、時効があります。診療報酬請求権の時効は令和2年4月診療分から原則5年で、起算日は診療月の翌月1日です[7]。再審査の6か月とは別の期限なので、混同しないでください。

医療機関再審査の復活件数は令和7年度で9.5万件です

令和7年度の医科・歯科計では、医療機関再審査の復活件数は9.5万件、復活点数は2億7,056万点でした。全国の集計で、自院の再審査結果を保証する数字ではありません[8]。

令和7年度(令和7年5月〜令和8年4月審査分)の医療機関再審査は、処理件数26.6万件、復活件数9.5万件、復活点数2億7,056万点でした[8]。前年度からは処理件数が13.5%、復活件数が15.7%、復活点数が31.4%増えています[8]。

DX審査支払機構は復活について「査定レセプトに対し医療機関から取消請求があり、同請求どおり査定取消となったもの」と説明しています[8]。

処理件数と復活件数は前年度より増えています[8]。ただし、申出をすれば一定割合で復活するという意味ではありません。ただし処理件数と復活件数は同じレセプトを追った数字とは限らないため、両者を割って「復活率」と呼ばないでください。公表されている指標ではありません。

もう1つ、伸び方に差があります。復活点数が前年度から31.4%増えたのに対し、処理件数の伸びは13.5%にとどまりました[8]。処理件数と復活点数は対象が異なるため、この比較から1件当たりの復活点数や、高点数案件ほど認められやすいとは判断できません。自院では復活した案件ごとに点数と根拠を記録します。

自院で追うなら、出した件数と戻った点数を記録してください。3か月続ければ、どの記号で出すと戻りやすいかが見えてきます。

誰が審査しているのか

DX審査支払機構の審査委員会は診療担当者代表、保険者代表、学識経験者の三者構成です(2026年10月時点)[2]。再審査の説明は医学的な必要性と算定ルールの両方を示します。

DX審査支払機構の審査委員会は診療担当者代表、保険者代表、学識経験者の三者で構成されています[2]。委員の任期は2年です[2]。

審査の基準は「保険医療機関及び保険医療養担当規則、診療報酬点数表、関連通知等の国が定めた保険診療ルール」に基づく医学的見地です[2]。薬剤については薬価基準や医薬品医療機器等法上の承認内容に基づいて算定・使用されているかが確認されます[2]。

三者で構成されている点は、再審査の書き方に関わります。診療担当者代表が加わっているため、医学的な説明は通じます。同時に保険者代表もいますから、保険診療のルールから外れた主張は認められません。求められるのは、ルールの範囲内で診療の必要性を説明することです。

なお、DX審査支払機構には調査権限がありません[2]。不正請求への対応は地方厚生局や保険者が行います[2]。査定は不正の指摘ではありません。 算定の解釈が審査委員会の判断と合わなかった、という結果です。ここを取り違えると、院内の受け止め方が過剰になります。

外注できる範囲についてはレセプト代行とはにまとめています。

まとめ

増減点連絡書が届いたら、記号を見てください。F・G・Hなら自院の手順を直します。A・B・C・Dなら、説明を足して再審査を出す余地があります。

点検をしても査定が生じる場合があります。審査には医学的な判断が含まれるため、点検だけで全件の支払を保証することはできません。目指すのは、防げる減点を減らし、説明すれば戻る減点を取りに行くことです。

北海道国保連には、病名欠落・記載誤り等の減額を再審査等の対象外とする案内があります[3]。自院の提出先の取扱いを請求担当者と共有し、請求前の点検に反映します。自院の点検体制を見直す場合は医療レセプト代行に対応範囲を出しています。個別の相談は無料相談、事務全体の見直しは1分でわかるAI活用度診断からどうぞ。

※内容は2026年10月時点で医療情報基盤・診療報酬審査支払機構および国民健康保険団体連合会が公開している資料に基づきます。運用は連合会ごとに異なります。

参考文献・出典

  1. 【医療機関等・薬局】増減点連絡書・各種通知書の見方 — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年2月)(参照 2026-10-24)
  2. 審査に関するQ&A — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
  3. 再審査請求方法について — 北海道国民健康保険団体連合会(参照 2026-10-24)
  4. 審査に関するQ&A — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
  5. 支払基金における審査の一般的な取扱い(医科) — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
  6. 再審査請求(取下げ)の方法 — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
  7. 請求支払に関するQ&A — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
  8. 令和7年度の支払基金の取扱状況 審査状況 — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年6月30日)(参照 2026-10-24)
  9. 審査の差異の可視化レポート — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)