レセプト点検 代行とは、請求前の診療報酬明細書を外部事業者が確認し、記載や算定の誤りを点検する業務です。委託範囲は当月分の点検、複数月の照合、医師への確認、修正作業のどこまで含むかで変わります。AX総合研究所は直近の査定理由と院内の作業時間を確認してから委託範囲を決めることを提案します。
点検体制を検討するときは、自院の記録と審査支払機関の統計を区別します。全国の査定件数は参考になりますが、自院の査定原因や代行の効果を示すものではありません。
何件に1件が査定されているか
医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(DX審査支払機構、旧・社会保険診療報酬支払基金)の令和7年度の原審査・医科歯科計では、請求1万件当たりの査定件数は138.2件です。令和7年5月〜令和8年4月審査分の全国集計で、2026年10月時点で確認した公表値です[1]。
項目 | 実績 | 前年度比 |
|---|---|---|
請求件数 | 8億6,042万件 | +0.3% |
査定件数 | 1,189.3万件 | ▲1.5% |
請求1万件当たり査定件数 | 138.2件 | ▲1.8% |
請求点数 | 1兆7,395億2,453万点 | +2.6% |
査定点数 | 62億838万点 | +15.7% |
請求1万点当たり査定点数 | 35.7点 | +12.7% |
医科だけで見ると数字が上がります。請求件数6億8,065万件に対して査定件数1,138.0万件、請求1万件当たり167.2件です[1]。請求1万点当たり査定点数は40.4点で、前年度から13.2%増えています[1]。
件数と点数が逆方向に動いている点に注意してください。 件数は1.5%減り、点数は15.7%増えました[1]。1件あたりの査定額が大きくなっているということです。DX審査支払機構は要因として、救急医療管理加算や特定入院料の査定点数の増加を挙げています[1]。
割合に直すと、請求1万件当たり138.2件は約1.38%です(2026年10月時点の公表値[1]からの計算)。100件に1件強という水準です。院内で説明するときは、出典と同じ「請求1万件当たり査定件数」で伝えると、金額・点数の割合との混同を避けられます。
点検範囲は単月・突合・縦覧の3種類です
レセプト点検は当月分を見る単月点検、医科・歯科と調剤を照合する突合点検、同一患者の複数月を照合する縦覧点検に区分できます[1][2]。
令和7年度の査定件数1,189.3万件の内訳は単月点検分755.5万件、突合点検分231.9万件、縦覧点検分202.0万件です[1]。
点検 | 見ている範囲 | 令和7年度の査定件数 |
|---|---|---|
単月点検 | 当月のレセプト1枚の中 | 755.5万件 |
突合点検 | 医科・歯科と調剤の突き合わせ | 231.9万件 |
縦覧点検 | 同一患者の複数月にわたる通覧 | 202.0万件 |
DX審査支払機構は縦覧点検を「同一患者の複数月にわたるレセプトの通覧点検により補正・査定された内容」と説明しています[2]。入外点検もあり、こちらは「同一患者の入院と入院外レセプトの通覧点検」です[2]。
当月のレセプトだけでは複数月や調剤内容との照合を必要とする誤りを見つけにくくなります。 前月の算定回数や、調剤側の内容までは、その場では見えません。突合・縦覧点検の合計で年間434万件近くが査定されています[1]。
突合点検の査定件数には調剤レセプト分も含まれます[1]。自院の負担として読むときは、この点を割り引いて考えてください。それでも、医科側の算定と調剤側の内容が合わないことで落ちる分は残ります。
DPC(入院診療の包括評価方式)の電子レセプトでは、令和7年度に返戻が増えています。令和7年度の受付件数619.4万件に対して審査返戻件数は14.3万件で、前年度から23.2%増えました[1]。受付1万件当たりでは231.2件です[1]。DPC対象病院では返戻の傾向を別に追う必要があります。
査定の理由は8つの記号で示されます
増減点連絡書の事由は診療内容のA〜Dと、事務上のF・G・H・Kに区分できます[2]。記号と実際の算定内容を照合して点検の観点を決めます。
区分 | 記号 | 内容 |
|---|---|---|
診療内容 | A | 療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上適応とならないもの |
診療内容 | B | 療養担当規則等に照らし、医学的に保険診療上過剰・重複となるもの |
診療内容 | C | A・B以外で医学的に保険診療上適当でないもの |
診療内容 | D | 告示・通知の算定要件に合致していないと認められるもの |
事務上 | F | 固定点数が誤っているもの |
事務上 | G | 請求点数の集計が誤っているもの |
事務上 | H | 縦計計算が誤っているもの |
事務上 | K | その他 |
A〜Dが診療内容、F・G・H・Kが事務上の誤りです。 自院でどちらが多いかを数えてください。事務上の誤りが多いなら、点検の手順とレセコンの設定の見直しを検討します。レセコンは診療報酬請求用のコンピューターです。診療内容の側が多いなら、算定の判断そのものを見直すことになります。
記号の分布は点検を外に出すかどうかの判断にも使えます。F・G・H・Kが中心なら、入力・集計やレセコンの設定を確認します。A〜Dが中心なら、診療録と算定要件の照合が必要です。どちらも院内対応と外部点検の対象になり得るため、記号だけで外注の要否は決めません。
DX審査支払機構は具体的な取扱いも公表しています。「DX審査支払機構における審査の一般的な取扱い(医科)」は、2026年9月30日の第40回まで累計881事例が掲載されています(2026年10月時点)[3]。別に「審査情報提供事例」もあり、医科82事例、歯科256事例、薬剤344事例です(2026年10月時点)[4]。
ただし読み方に条件があります。公表資料は冒頭で「本公表事例に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意願います」と断っています[3]。「原則として認められない」であって、絶対の規則ではありません。
査定点数の約4割はコンピュータチェック契機です
医科電子レセプトの査定点数の構成では、コンピュータチェック契機が約4割、職員契機が約6割です[1]。審査したレセプトのうち機械が見る件数の割合ではありません。
令和7年度の統計は電子レセプトの医科について、査定に至った契機ごとの点数を示しています。特別審査委員会分は含みません[1]。令和8年6月審査分でも、請求1万点当たりの査定点数42.6点のうち、コンピュータチェック契機が15.4点、職員契機が25.3点、審査委員契機が1.8点でした[5]。
DX審査支払機構はコンピュータチェックのルールを公開しています。2025年10月31日時点で、本部点検条件事例が306,324件、チェックマスタ事例が44,635件です[6]。
公開を慎重に検討する条件も示されています。非公開と一律に決めた区分ではありません[6]。摘要欄の記載事項の確認が必要なもの、医学的判断が必要なもの、診療行為・医薬品の適応に関するもの、医薬品の用法・用量に関するもの、その他(禁忌使用など)の5つです[6]。
適応や用法・用量の判断には、コンピュータチェック後の医学的判断が必要な事例があります[6]。 ここが人の点検が要る理由です。院内のレセコンのチェック機能を通したから安心、とはなりません。
支払基金が公開しているチェック条件は、自院の点検にも使えます。30万件を超える事例をすべて読むことはできませんが、自院でよく算定する項目について検索すれば、どの条件で引っかかるかが分かります。頻出の10項目だけでも確認しておく価値があります。
公開の目的について、DX審査支払機構は審査の透明性向上と適正請求の促進を挙げています[6]。事前に知っておけば防げる査定が、そこに含まれているということです。
代行に出すと何が変わるか
レセプト点検を代行に依頼すると、院内の作成担当者とは別の担当者による確認や、複数月を含む点検を契約で指定できます。必要なデータと報告内容を先に決めます。
1つ目は、別の目が入ることです。自院の職員が作ったレセプトを同じ職員が点検すると、同じ思い込みで同じ箇所を見落とします。2つ目は複数月にわたる観点や、算定ルールに関する知識を使った確認を依頼できることです。縦覧点検で落ちる分は単月の点検では見つかりません。
責任の所在は移りません。個人情報保護法第25条は個人データの取扱いを委託する場合に、委託先に対する必要かつ適切な監督を行わなければならないと定めています[7]。個人情報保護委員会のガイドラインは、監督を適切な委託先の選定、委託契約の締結、取扱状況の把握の3つに分けています[7]。
契約前に、委託先が法令上求められる水準の安全管理措置を講じているか確認します[7]。自院独自の高い水準を、そのまま法律上の最低基準とみなすものではありません。点検の精度だけで選ばないでください。代行の範囲と料金はレセプト代行の料金相場に、外注できる範囲はレセプト代行とはにまとめました。
再審査で戻せる分がある
査定に異議があり、診療の必要性や算定要件を満たす根拠がある場合は、再審査を申し出られます[8]。再審査まで代行に含むかは別途確認します。
令和7年度の医療機関再審査は処理件数26.6万件、復活件数9.5万件、復活点数2億7,056万点でした[1]。前年度からは処理件数が13.5%、復活件数が15.7%、復活点数が31.4%増えています[1]。
DX審査支払機構は復活について「査定レセプトに対し医療機関から取消請求があり、同請求どおり査定取消となったもの」と説明しています[1]。
DX審査支払機構は事務上の明らかな誤り等を除き、再審査申出を原則6か月とする取扱いを示しています(2026年10月時点)[10]。早い申出が復活を保証するわけではありません。根拠を揃え、提出先の取扱いに沿って準備します。
再審査を出すかどうかの判断にも、点検の力が要ります。査定の理由が記号で来るため、それが自院の算定のどこに当たるかを読み解く作業が発生します。ここを代行に含めるかどうかは、契約時に確認してください。
数字の読み方にも注意が要ります。処理件数26.6万件と復活件数9.5万件は、全国集計の異なる指標です[1]。単純に割って自院の復活率や申出の成功確率として使うことはできません。自院では申出案件と結果を対応付けて記録します。
なお、保険者側から出される再審査もあります。令和7年度の保険者再審査は処理件数990.5万件、査定件数238.0万件で、処理件数に対する査定件数の割合は24.0%でした[1]。こちらは医療機関が出す再審査とは別の流れです。
認定試験は終了しました
公益財団法人日本医療保険事務協会は2026年3月31日に解散しています。採用や育成では、同協会の認定資格の有無と実務能力を分けて確認します(2026年10月時点)[9]。
公益財団法人日本医療保険事務協会は、令和8年3月31日をもって解散しました[9]。同協会の解散により、従来と同じ認定試験の受験を前提とした育成計画は見直しが必要です[9]。
認定試験の状況と、院内で実務を教えられるかは別です。既存の教材や算定ルールの確認、院内の指導で育成する選択肢は残ります。
採用の場面でも影響が出ます。資格を採用条件にする場合は、現行の取得制度を確認します。AX総合研究所は資格とともに実務経験の内容も確かめることを提案します。どの診療科で、どの規模の医療機関で、どの工程を担当していたか。この3点を聞くほうが、実態に近い判断ができます。
認定試験の状況も、採用・育成と点検体制を検討する材料です。院内の指導担当者が不足する場合は、外部点検や教育支援を含めて検討できます。逆に、既に経験のある職員がいる医療機関では、その人の時間をどこに使うかの設計が要ります。点検に使うのか、返戻と再審査の対応に使うのか。
まとめ
点検代行の検討は査定理由と点検範囲を確認するところから始めます。AX総合研究所の提案する手順は次の2つです。
- 直近3か月の増減点連絡書で、事由をA〜DとF・G・H・Kに分けて数えます。
- 単月・突合・縦覧のどの点検による査定かを確認し、院内に足りない確認作業を選びます。
査定事由と点検範囲を集計すれば、点検体制の課題が見えます。事務上の誤りが多いなら手順の問題、縦覧で落ちているなら点検の範囲の問題です。自院の点検をどこまで外に出せるかを検討する場合は、医療レセプト代行に対応範囲を出しています。個別の相談は無料相談、事務全体の見直しは1分でわかるAI活用度診断からどうぞ。
※数値は2026年10月時点で社会保険診療報酬支払基金が公表しているものです。審査月ベースの集計であり、診療月とは区別します。月遅れ請求などがあるため、一律に1か月差とは限りません。
参考文献・出典
- 令和7年度の支払基金の取扱状況 審査状況(令和7年5月〜令和8年4月審査分) — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年6月30日)(参照 2026-10-24)
- 【医療機関等・薬局】増減点連絡書・各種通知書の見方 — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年2月)(参照 2026-10-24)
- 支払基金における審査の一般的な取扱い(医科) — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
- 審査情報提供事例 — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
- 令和8年6月審査分の審査状況 — 社会保険診療報酬支払基金(令和8年8月25日)(参照 2026-10-24)
- コンピュータチェックに関する公開 — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) — 個人情報保護委員会(参照 2026-10-24)
- 審査に関するQ&A — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)
- 公益財団法人日本医療保険事務協会 — 同協会(参照 2026-10-24)
- 審査の差異の可視化レポート — 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構(参照 2026-10-24)